道助の自分セラピー

自分の心の取説。自分セラピーの発信。日本メンタルヘルス協会講座での学びと所感の記録。

ピンポン営業時、人生の恩師の思い出

恩師と呼べる人がいる幸せ

 

 私は十何年前に、今の仕事に就く前に、飛び込み営業の仕事をしていました。もう、今の時代、飛び込み営業という言葉が通じるかわかりませんが、要はインターホン(ピンポン)を鳴らし、自社の商品を売り込む営業スタイルでした。その時に、ただの飛び込み営業なのに、私のことを育ててくれた恩師に出会いました。まったく、縁もゆかりもない人間に、様々なことを教えてくれた恩師がいます。今日歩いていた時に、ふと甦ってくるものがあり、記したいと思います。

 

 

 始まりは、一回の飛び込み営業からでした。「お前は下を向きながら、しかも見積書も一人前でない、ひどい営業をかけてきた。下を向いて歩いていると、運は逃げていく。見積書は侍で例えるならば、刀と同じものだ。出直してこい」そんなことを言われた記憶があります。

 

 それから、見積書を会社のフォーマットでなく(今となっては言えませんが)、フォーマットを作りだし、その人が認めてくれるであろうフォーマットを作りました。当時の権限のすれすれだった気がしますが。認められる刀を作り、再度ピンポン営業をかけました。

 

 その結果、認められたくさんの指導を受けさせて頂きました。最初に聞いたことは、「人生は愉快である」ということでした。戦中も生きてこられたその恩師は、華僑に認められ、金額を自由に書いてよい小切手を貰ったことを、自慢話のように言われました。

 

 他にも、現在の悩んでる会社の社長の悩みを相談に乗っていることを話してくれました。私には朝起きたら嫌な上司の悪口を太陽に向けて発散すること、某チェーンレストランではチーズインハンバーグが原価が高いので注文すべきこと、社会に向けてアンテナを立てて置くこと、物事は逆転の視点で考えること、トルコ通貨のトルコリラに注目すること、35歳になったら人生が決まると思いこうどうすること、48歳までに会社の社長になり奥さんを喜ばせることが大切だということ、太陽を見て笑うこと。ここでは書ききれないくらいの、アドバイスを貰いました。

 

 そして、私が35歳で大きなトラブルに会った時、当時は職を変えてましたが、一番最初に相談の連絡をさせて頂きました。「一番の味方になってくれる人に、最大限の誠意をはらい頭を下げろ」と助言を貰いました。

 

 そして、今、私はここに残れてます。

 

 その数年後、おかげ様で生きながらえていることをお礼しようと電話しました。何度電話をかけても、留守番電話にもならず、ならず、ならずが続きました。なんとなく嫌な直感があり、休みの日に恩師の家に出向きました。ピンポンを鳴らしても不在、嫌な思い出涙ぐみながらその場を離れた時に、お迎えに住む方に会いました。事情を話すと、施設にご夫婦で行かれ今は娘さんが月に何回か管理に来てるとのこと。

 

 何とも言えない気持ちで帰路につき、数か月が過ぎました。とある日、ポストに見識のない方から手紙がありました。恩師の娘さんからでした。お迎えさんから私が訪問し涙ぐんでいたと聞いていた話と、恩師ご当時やり取りをしていた手紙から、ひょっとしたらと思いとのことでした。喜ぶと思うのとのことで、施設の住所や連絡先、担当責任者の名前を教えてくれました。

 

 いてもたってもいられず、担当責任者に連絡をとり、訪問のアポイントを取りました。感謝を伝えたい、その一心だけでした。施設の担当責任者の方を通し、恩師にアポイントをとることができ、施設へ訪問しました。夏の暑い日、恩師も目が弱くサングラスをかけていることが多かったので、私もサングラスで。

 

 施設のピンポンを鳴らし、恩師の元へ。そこには恩師とお会いしたことのある奥様が一緒に迎えてくれました。恩師へ今、会社を変えて家族を守るためがんばっている今、あの時に出会えた感謝を精一杯伝えました。今まで、私の前で見せたことのなかった涙を一杯に流して、「良かった。良かった。」と言って貰えたことが、今でも忘れられません。私も、涙を流せたことが忘れられません。

 

 お会いして数週間後、娘さんから恩師が亡くなった旨の手紙を頂きました。

 

 今でも、落ち込んでいる時に空を見るたびに、あの時の思いが舞い戻ります。晴れた、太陽の輝く空では、「上を向いて笑え、運が逃げていくぞ」と。大きな声で笑う、人生の恩師の声が聞こえるようです。

 

 娘さんからの手紙に「私の最後の弟子だ」と残された日記に書かれていたとのことでした。

 

 恩師への感謝。今も私は時々下を見てしまいますが、上を向いて歩けるよう意識できる人間でいます。今後も見ていて下さい。笑顔でいますから。

 

 お読み頂き、ありがとうございます。